ベンガラを未来へ

 柿右衛門赤と呼ばれた有田の伊万里焼や九谷焼の赤絵付け顔料、漆塗り顔料、京都のベンガラ格子やさび壁など建築塗料などに用いられていた赤色顔料、緑礬ベンガラは耐候性や耐久性にすぐれた顔料といえる。緑礬ベンガラは空気中で最も安定した酸化状態であるため、他の顔料と比べ、化学的な変化がおこりにくい。この特徴を見出し、出発原料である天然緑礬を九州大学チームが研究した結果、かつての柿右衛門赤を髣髴させる次世代ベンガラをつくることに成功した。かつての緑礬ベンガラより汎用性があり、豊かに彩る次世代ベンガラ顔料として生まれ変わった。人体に有害な公害はなく、無鉛顔料であり、環境に優しい。まさに甦る江戸のナノテクノロジーと現代の先端技術の融合である。

 西江家は創業1647年よりベンガラ産業に携わり、以来350年当時と変わらぬ「あかの中のあか」と呼ばれる顔料、緑礬ベンガラを使用目的別に製造してきた。原料となる天然緑礬・緑礬ベンガラが当家のみに現存している。その天然緑礬を出発原料とした次世代ベンガラを開発し、オーダーメイド方式で販売している。(株)西江邸は地域の遺産を復興させ、未来に繋ぐため、ベンガラの歴史、文化、次世代ベンガラ、そして、赤にこだわり続けてきた技と精神を後世に残すことを目的に設立した。常設展示やベンガラルネサンス特別企画展、関連講座・イベント、ベンガラ研究所、そして研究所内にはかつて鉱山で使用されていた道具類も展示している。産業遺産である「あかの文化や美意識」を岡山県高梁市から世界へ発信する。更に歴史教科書には載っていない先人たちの知恵と涙と笑い、過去の歴史の中でおきたベンガラ産業の光と影を未来へ伝えられるような教育プログラムつくりも考えてゆきたい。次世代ベンガラから未来へ贈るメッセージである。



ベンガラ研究所
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